ふとファッション誌を見ていて、軽いイタズラを思いついた。
寝転がってゲームをしているバカに呼びかける。
「なあ、覚えてるか」
「あー……何がだ、兄貴?」
「お前が4歳か5歳のころ、生き別れになった妹がいたんだぞ」
「はぁ?」
「ほら、アルバムもそのころの写真だけ、あまりないだろ」
画面がメニューに切り替わった。
意外に食いつきがいい。
ま、単純だしなぁ。
「そう言われてみれば……」
納得してやがる。
そんなもん、いるわけないだろうが。
「どんな娘だったんだ?」
「親にナイショで連絡取り合ってんだけど、この雑誌にモデルとして出るってメールがあったんだ」
「マジかよ!? なんでオレばっかりのけ者に……」
弟が18歳で、それの4,5歳下。
だけど小学生っぽい中学生の女の子、つまりロリっ娘。
事前に探してあったそれを指し示す。
「ほら、この娘がそうだ」
顔もかわいいけど、なにより服!
ふわふわで、ひらひらだ。
萌えだな、うん。
いっしょに映っている人に比べて、体格も随分小さいのも良い。
やっぱり貧乳だろう。
「うわ、ホントかよ……へぇ」
「ウソだけどな」
「そうかって、おい!!」
テレビの芸人さながらのツッコミ。
ベタだ。だがそれが良い。
「はっはっはっ、見事にひっかかりやがったな」
「……」
「あー、笑った笑った。やっぱりお前、バカだろ」
「ウソつきはバチが当たるんだぞ、この野郎!」
「何歳だよ、おま、っ!?」
か、体が軋む。
今にもつかみかからんばかりだった弟も、さすがに心配そうだ。
っていうか、その顔すらゆがんで見える。
どうなってるんだ。
ゴキンゴキンと骨が変形し、内臓がかき回され……最後に服がぶわっと広がった。
「あに、き?」
「きぃお兄ちゃん、どうかしたの?」
「へ?」
そう言いたいのはマコトもいっしょだった。
なんでそんなこと言っちゃったんだろう。
お兄ちゃんにマコトがどうなったのか聞こうと思ったのに。
「兄貴……だよな?」
「もぉ、きぃお兄ちゃんなに言ってるの? マコトはマコトだよぉ」
「そうか、マコトか」
「へんなお兄ちゃん」
そんなこと言いたいはずがないよ。
なのに口も体もかってに動いちゃう。
かわいいフリフリのワンピースをつかんで、お兄ちゃんの方をじっと見て。
「あのね、マコトね」
「おお、どうかしたか?」
「きぃお兄ちゃんのこと考えるとね、はぅ、やっぱり言えないよぉ」
「大丈夫。笑わないから言ってみな。ね?」
お兄ちゃんが頭をぽんってしてくれる。
なんだかすっごく安心して力がふにゃふにゃぬけちゃう。
「あのね。きぃお兄ちゃんのこと考えると、ここが、きゅって苦しくなるの」
むねの前で手をくんで、ここだよってお兄ちゃんにおしえる。
マコトのちっちゃいけど、きらいにならないよね?
「うん、それで?」
「えっと……それでね、キスしてくれたら、なおる、かも」
「キスだけで良いのか?」
「え……あの、あう」
かぁってあつくなっちゃった。
だって、キスより先って、男の人と女の人がするのだよね。
きぃお兄ちゃんに、さいしょにしてもらえるなんて……しあわせすぎて、マコト死んじゃうよぉ。
「どうして欲しいのか言ってごらん、マコト」
「ふえぇ……まっ、マコトにキスして、そのいっぱいいっぱい……」
そこからははずかしくて言えなかった。
でも、きぃお兄ちゃんはわらってゆるしてくれた。
「がんばったな。じゃあ、お兄ちゃんもがんばってマコトのこと気持ちよくするからな」
「う、うん♪」
ちょっといたかったけど、お兄ちゃんはやさしくて、だからマコトはきぃお兄ちゃんのことがだいすきです。